ソニーのプレイステーションの開発を題材にしたルポ。
■誰が見ても最初は負け試合
:とりあえず300万台売ってから来てください、とゲームメーカーに言われた
■リアルタイム性が大事
:ボタンを押した瞬間に反応する、というのが必要
:同じコンピューターでもワークステーションやパソコンにはそれほどリアルタイム性は必要ない
:従って一見リアルタイムに見えても開発者の意図しないところで突然遅延したりする
:プレイステーションの期間技術となったシステムGは画期的に遅延がなかった
■もともとゲームが作りたかったわけではない
:ゲーム以外の用途にもマルチに対応できる超高性能な家庭用コンピューターを出したかった
:超高性能なコンピューターを作るためにSGIのワークステーション用LSIが使いたかった
:しかしSGIのワークステーションは1000万円くらいした
:高価になる理由は簡単で、数が少ないから
:数を出せば安くなるはず、そこで数を出すためにまずはゲームとして出すことにした
■コンセプトを骨太に
:セガセターンはもともとドット絵を前提にしたアーキテクチャ
:ところがアーケードで出した三次元CGのバーチャファイターが大うけ
:その上にソニーが三次元CGのゲーム機を出すと聴いた
:戦略を完全にミスった、とこの時点で気付いた
:そこでほぼ完成してたセガサターンの設計に、同じCPUを加えて三次元CGに対応させた
:久夛良木氏曰く「後付で何とかなると思うほうが悪い。性能も良くならず、コストも跳ね上がる。ありものの組み合わせでいいものはできない」
■CD-ROMを採用したのも同じ
:もともとのコンセプトが絵と音と文字を同時に扱えるエンタテイメントコンピューターである以上、容量の少ないROMカートリッジは不適切
:初期のコンセプトに拘って、いろいろ議論はあったものの「CD-ROMで行こう、決まりだ」と久夛良木氏が決断
:CD-ROMにした結果、製造コストも下がり、製造リードタイムも短くなった
:製造コストとリードタイムが圧縮化したことで、初期に小さく作って市場の反応を見ながら生産するというアプローチが可能になった
:任天堂のROMカートリッジはその逆で、リスクを取れないために売れることが確実のソフトを初期に大量生産するだけで、しかもリスクを任天堂側でとることを嫌い、すべてソフトメーカーの買い上げにしていた・・・ここに潜在的に不満を持っているソフトメーカーは多く、最終的にはドラクエのエニックスやファイナルファンタジーのエニックスもソニー側につくことになった
■新しいゲームクリエイターを採用
:新規プラットフォームだからエースクリエイターはゲームを作ってくれない
:そこで既存のゲームクリエイター以外から新たな才能を集めた
:佐藤雅彦のIQや松浦雅也のパラッパラッパーはその代表
■次世代機を出すに辺り、飛躍的な性能向上を求める
:エンジニアでさえ、それは無理ですよ、という数値を社長が出す
:無理ですよ、というエンジニアに対して、納得せずストレッチしまくる
■とにかくハードでちゃんと黒字を出す
:いくつかの分析ではプレイステーション本体は赤字で、ソフトのライセンスで儲けているとされていた
:確かに生産初期の歩留まりの悪い段階で本体が赤字だったことはある
:しかしこの考えを「考え方のポイントがずれている」と久夛良木氏は一蹴する
:曰く「ハードで黒字化しないと健全なビジネスにならない。ハードの黒字化に失敗したところは結局はみんな撤退しています」
:セガサターンもそうだった。急場しのぎの設計変更でコストが上がったが競争力を維持するために赤字でも売り続けた
:この価格切り下げ作戦はソニーの作戦通りだった。もともとシンプルなアーキテクチャを採用しているプレステは価格を下げやすいため、改善がどんどんコスト切り下げにつながっていったがセガサターンはもともと後付けで出来上がったためにコスト削減をしにくいアーキテクチャだった
:セガはソニーほど企業体力が潤沢ではない・・・大きな投資を行って開発したハードを赤字で販売し続けることは企業体力を徐々に奪っていく
:類型販売台数が1000万台を超えるころにプレステはハード単体の販売での黒字化を達成
■後で決められることは後で決める
:同時平行で技術開発を進めていて、なかなか決めないことが後で助かったということが多かった
■安く作るためには抜本的なアイデアが必要
:プレステ用に世界で始めてDVDとCD両用のピックアップレンズを開発した
■底の深いプラットフォームが必要
:ゲーム開発者が1~2年でハードの潜在能力を引き出せるようでは開発者が飽きてしまう
:発売後4年ぐらいしてやっと性能の100%を引き出せるようにする
:ハードウェアの世代交代が近い時期になると100%を超えるようなとんでもないソフトが出てくる
:PS2は一言で搾り出せる機械になっている
■スピードの限界は熱の限界
:コンピューターの性能を上げるにはクロックスピードを上げればいい
:クロックスピードとはパソコンのCPUが一秒間に何回のサイクルで仕事をするかということ
:例えば2ギガヘルツのCPUなら一秒当たり20億回のサイクルで処理を行っている
:クロックスピードを上げると消費電力も上がり、その分発熱量も増える
:過度の発熱はプロセッサの正常動作を妨げる
:この発熱量の増大が、実はコンピューターの性能アップの最大のボトルネックになっている
■中堅ソフトの苦戦
:PS2の売上はなかなか伸びなかった
:理由は中堅ソフトの苦戦
:大ヒットシリーズは相変わらず売れていた
■難しくなりすぎたゲームの隙間を取られた
:理由はゲームが難しくなりすぎたことにある
:コンピューターが高度化してゲームも複雑になり、10時間プレイしないとゲームとしてのおもしろさが見えてこないようなソフトが多くなってきた
:これは著しく他の娯楽に比べてタイムコンシューミング
:学習コストが高くなったことによって、シリーズものへの傾斜が強まった・・・PS2発売から2007年8月までに国内に出されたトップ100タイトルのうち、シリーズものでないのはなんとたった3本しかない
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