9/19 はじめての構造主義 橋爪大三郎
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■ソシュールはそれまでの言語学がアホくさかった
- ソシュール以前の言語学は、言語が現代に至るまでの変化の過程をつぶさにトレースしていくことがメインの仕事だった
- しかし、そんなことでいいのか、とソシュールは思った
- 人間と言語は切っても切れない関係にある・・・言語を通じて人間のより深い理解へといたるような学問・・・それを言語学としようじゃないか、と彼は思った
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■言語が切れるように、人は世界を切っていることをソシュールは見つけた
- 日本では湯と水は違う言葉なのに、英語では湯そのものを表す単語は無い
- ものがあって、それにしたがって世の中を切っているのではなく、言葉によって世の中を切っているのが人間
- Aさんの“あ”とBさんの“あ”では違う音なのに、我々は“あめ”という言葉を聞き分けられる・・・重要なのは音そのものではなく、その音が作り出す“差異”にある・・・言語とは結局は“差異の体系”である
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■レヴィ・ストロースの「親族は女性を交換する仕組みである」という仮説にもっとも影響をあたえたのはモースの研究だろう
- モースは「贈与論」というユニークな論文を書いた
- 彼は贈与が未開社会でとても大きな意味を持っていることを最初に注目した学者だった
- モースは、ニューギニアの沖合いにある贈与の慣習「クラ交換」に着目した
- クラは貝殻とか花で飾られたちょっとした器物だが、これを交換するために各部族は命がけでカヌーを漕ぎ出す・・・この交換のために死ぬこともしばしばあったらしい・・・・
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■価値があるから交換するのではなく、交換するから価値があることに気づいた
- なんでこんなつまんないものを命がけで・・・・と思う前に、我々も日本銀行券と書かれた紙っぺらをありがたく交換していることを思い出さなければいけない
- つまり、価値があるから交換しているのではなく、交換しているから価値があるのだ
- 女性もこれと同じで、部族間で交換のための財とされているのである
- 近親相姦が原始社会においても禁止されているのは、この交換財としての役割を維持するためである
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■ギリシヤ人はヒマだったが頭が良かった・・・公理をつくったのだから
- 由緒正しいギリシア人は働いちゃいけなかったので、ヒマをつぶすために証明問題に没頭し、ほとんどの証明を終わって証明の網の目を作ってしまった
- この証明を良く見て見ると枝分かれのような構造になっており、一番基本的な事実はほかの事実=定理をしょうめいするばっかりで自分はちっとも証明されていないことに気づいた
- 証明の枝分かれの、ちょうど出発点になっているところについては、仕方ないので「理屈抜き、証明抜きで正しいことにしよう」ということになった・・・これを公理という
- 公理がよそから証明されると非常にかっこ悪いので、よくよく吟味が重ねられ、最終的には5つに絞り込まれた・・・この5つの公理から幾何学の知識はすべて証明(の連鎖)によって跡付けることができるようになった
- このことを記した本がユークリッドの「幾何学原本」である・・・実はユークリッドが実在の人物かどうかよくわかっていないのだが、この本は実在しており、以後二千年にわたってすべての学問の手本となった・・・本当に見事で美しい本である
- ちなみにユークリッドの幾何学原本には次の5つの公理が載っている
- 1:どんな二点のあいだにも、一本の線分が引ける
- 2:線分を好きなだけ延長できる
- 3:好きな点を中心に、好きな半径の円を描くことが出来る
- 4:直角はどれも等しい
- 5:直線外の一点を通って、その直線に平行な直線を、一歩だけ引ける
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■アリストテレスはすごい
- アリストテレスは論理学を一人で作ってしまった
- 三段論法の薦め方を何通りにも分けて、推論が正しい場合、間違いである場合をいちいち確かめて一覧表にした
- 記号論理学が出来てからのここ100年くらいで古臭くなってしまったが、それまで二千年のあいだ絶対的な権威を誇ってきた・・・スゴイ!
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■代数学と幾何学を融合したのはデカルト
- ギリシア人は幾何学は大好きだったが算術は大嫌いだった・・・それは奴隷や商人の仕事だったからである・・・そのためギリシアでは代数学はぜんぜん進化しなかった
- 代数学を進化させたのはアラビア人である・・・
- 代数学と幾何学を結びつけたのはデカルトである・・・彼は17世紀の人だがある時急にひらめいて座標軸というものを思いつき、平面の各店をx座標、y座標の組み合わせで示してみると、なんと円錐曲線が二次方程式で表せることに気づいた
- そんな具合にして、あれよあれよという数ヶ月の間に、解析幾何学をこさえてしまった
Wednesday, September 19, 2007
9/19 フラット革命 佐々木俊尚
一言でいって深い本である。最近のインターネット関連の書籍のほとんどがビジネスサイドに関するものばっかりであったのに対して、この本は人間そのものがどう変わるのか?公共性はどうなるのか?社会はどうなるのか?といった問題意識を提起している。一種のルポルタージュになっているので、サっと読めるものでもないが、読み通せば確実に、これは考えなければいけない問題だなという、宿題に似た感じを与える本である。特に、匿名性が維持されるネット内において建設的な関係性・公共性をどう維持していくのか?という点は深く考えていかなければいけない問題だと思う。
·
■インターネットの浸透によって“公共性”のあり方も変わってくる
- 既存マスメディアからのパワーシフトが発生しているが、既存マスメディアはそれはそれで公器としての昨日、公共性を担保させるための役割は果たしていた
- もし仮に、ネットの台頭によって既存マスメディア企業がつぶれてしまったとしたら、公共性は誰が担保するのだろう
- ウィキペディアは集合知として存在しているが、等のウィキペディア自身はウィキペディアを“信頼できない情報源”として分類しており、信頼できる情報源としてウォールストリートジャーナルやタイムといった既存マスメディアを挙げている・・・彼らはネットの台頭によって経営上存続が難しいかもしれないのに
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■ネットの台頭によってゲマインシャフトからゲゼルシャフトへのシフトが起こっている
- 20世紀初頭のドイツの社会学者フェルディナント・テンニースは地縁や血縁にもとづいた共同体であるゲマインシャフトは、社会が近代化され、産業資本主義によって工業化が進められると徐々に消滅し、利害関係だけにもとづく人工的な共同体=ゲゼルシャフトにしふとしていくと説いた
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■ネットにおける匿名性の問題は、仲裁可能性の問題として捉えられる
- ネットにおいて事象や個人を名を明かさずに匿名で攻撃する人について、卑怯だという非難をする人が多いが匿名性を非難することはなかなか難しい
- たとえばキップリングというニックネームを用いるのと、東京都山口さんという名前を用いるのと東京都匿名希望という名前を用いるのは、もし個人名が何らかの権威と結びついて有名性を持っていない限り、本質的に違いは無い
- しかしアスキー創業者の西氏はこうやって匿名に関しての問題性を指摘する
- たとえばインドと中国の国境は両国が何年もかけて争ってきており、容易に譲歩できる問題ではない。これは国際社会として、どう仲介していくのかというのが問題になるわけだが、インターネットではそうはならない。他人から失礼なメールが送られてきたら、そのメールを削除して、以降その人からのメールをすべて拒否する、というようにプログラムしてしまう・・・・サイバーの世界では一旦嫌いになったら関係の修復が難しい。誤解やミスコミニュケーションによって発生した断絶を、修復するすべを持っていない・・・サイバー世界でけんかしたら仲良くなれない、と、彼は指摘する
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■ネットは恐ろしい、醜いものまで目の前に突きつけるメディアである・・・そこから美しいものだけを取り出すリテラシーと勇気が必要
- これまではマスメディアが世の中で起きていることをフィルタリングして、しかも砂糖でくるんで届けてくれた
- いまやネットはオブラートにくるまずに恐ろしい・醜い側面をダイレクトに見せてくれるメディアである
- インターネットの情報はノイズにあふれている・・・しかしこのノイズが世の中の実態そのものなのである・・・この膨大なノイズの中からリアリティを失わずに本質をつかみあげることが出来るか・・・?
- これは大変である・・・・人々がこの世界で浮遊し、誰も警察や役所の役割を果たさない・・・自分たちで自治をしていくしかないのだけど、この中には犯罪者や異常に攻撃的な人、ずるい人、自分とまったく意見が会わない人が居る・・・・どうやって意見がまとまるのかさえはっきりしない
一言でいって深い本である。最近のインターネット関連の書籍のほとんどがビジネスサイドに関するものばっかりであったのに対して、この本は人間そのものがどう変わるのか?公共性はどうなるのか?社会はどうなるのか?といった問題意識を提起している。一種のルポルタージュになっているので、サっと読めるものでもないが、読み通せば確実に、これは考えなければいけない問題だなという、宿題に似た感じを与える本である。特に、匿名性が維持されるネット内において建設的な関係性・公共性をどう維持していくのか?という点は深く考えていかなければいけない問題だと思う。
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■インターネットの浸透によって“公共性”のあり方も変わってくる
- 既存マスメディアからのパワーシフトが発生しているが、既存マスメディアはそれはそれで公器としての昨日、公共性を担保させるための役割は果たしていた
- もし仮に、ネットの台頭によって既存マスメディア企業がつぶれてしまったとしたら、公共性は誰が担保するのだろう
- ウィキペディアは集合知として存在しているが、等のウィキペディア自身はウィキペディアを“信頼できない情報源”として分類しており、信頼できる情報源としてウォールストリートジャーナルやタイムといった既存マスメディアを挙げている・・・彼らはネットの台頭によって経営上存続が難しいかもしれないのに
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■ネットの台頭によってゲマインシャフトからゲゼルシャフトへのシフトが起こっている
- 20世紀初頭のドイツの社会学者フェルディナント・テンニースは地縁や血縁にもとづいた共同体であるゲマインシャフトは、社会が近代化され、産業資本主義によって工業化が進められると徐々に消滅し、利害関係だけにもとづく人工的な共同体=ゲゼルシャフトにしふとしていくと説いた
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■ネットにおける匿名性の問題は、仲裁可能性の問題として捉えられる
- ネットにおいて事象や個人を名を明かさずに匿名で攻撃する人について、卑怯だという非難をする人が多いが匿名性を非難することはなかなか難しい
- たとえばキップリングというニックネームを用いるのと、東京都山口さんという名前を用いるのと東京都匿名希望という名前を用いるのは、もし個人名が何らかの権威と結びついて有名性を持っていない限り、本質的に違いは無い
- しかしアスキー創業者の西氏はこうやって匿名に関しての問題性を指摘する
- たとえばインドと中国の国境は両国が何年もかけて争ってきており、容易に譲歩できる問題ではない。これは国際社会として、どう仲介していくのかというのが問題になるわけだが、インターネットではそうはならない。他人から失礼なメールが送られてきたら、そのメールを削除して、以降その人からのメールをすべて拒否する、というようにプログラムしてしまう・・・・サイバーの世界では一旦嫌いになったら関係の修復が難しい。誤解やミスコミニュケーションによって発生した断絶を、修復するすべを持っていない・・・サイバー世界でけんかしたら仲良くなれない、と、彼は指摘する
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■ネットは恐ろしい、醜いものまで目の前に突きつけるメディアである・・・そこから美しいものだけを取り出すリテラシーと勇気が必要
- これまではマスメディアが世の中で起きていることをフィルタリングして、しかも砂糖でくるんで届けてくれた
- いまやネットはオブラートにくるまずに恐ろしい・醜い側面をダイレクトに見せてくれるメディアである
- インターネットの情報はノイズにあふれている・・・しかしこのノイズが世の中の実態そのものなのである・・・この膨大なノイズの中からリアリティを失わずに本質をつかみあげることが出来るか・・・?
- これは大変である・・・・人々がこの世界で浮遊し、誰も警察や役所の役割を果たさない・・・自分たちで自治をしていくしかないのだけど、この中には犯罪者や異常に攻撃的な人、ずるい人、自分とまったく意見が会わない人が居る・・・・どうやって意見がまとまるのかさえはっきりしない
Monday, September 17, 2007
読書日記:ウェブは資本主義を超える
9/14 ウェブは資本主義を超える 池田信夫
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■個人をプロセッサ、組織をネットワークと考え、情報処理コストと通信コストのどちらが相対的に高いかによってネットワークの構造が変わる
- 情報処理コストがネットワークコストより相対的に高いときには情報を中央集権的に処理して端末に送ったほうがよい
- 逆に通信コストが高い場合は端末で分散処理して通信料を減らしたほうがいい
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■広告費だけでなく販促費を視野に入れることで大きな市場が期待できる
- 日本の広告費は約6兆円でGDPの約1%である・・・この水準は一定しており、この中で市場を食い合っている以上は大きな成長は期待できない
- 一方、日本における顧客へのマーケティング費用の総計は20兆円、世界全体では100兆円くらいあるとされている
- グーグルが狭義の広告産業を超えて従来のどぶ板営業を代替するものだとすれば、広告市場を越えた大きな成長機会をつかまえるかも知れない
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■インターネットに関連したビジネスではサービスのリリースタイミングが死命を決する重要性を持つ
- Web2.0という言葉はコンピューター中心からネットワーク中心への移行という概念を含んでいるが、これは昔サンやオラクルが流行らせようとした「ネットワーク・コンピューティング」とか「シン・クライアント」といった概念に近い
- これらの概念は論理的にはありえたのだろうが、いかんせんダイヤルアップの時期に出てきたのは早すぎた
- 普通、一度失敗したビジネスモデルは二度とものにならないが、ムーアの法則(半導体の集積度が18ヶ月で2倍になるという経験則)によってコストが3年で1/4になるITの世界では、3年前に赤字だったビジネスモデルが、いまやったら黒字、ということがありうる
- グーグルは検索エンジンのパイオニアでもなければ、検索広告の発明者でもない・・・問題はそういう技術をどう組み合わせてどういうタイミングで世に出すかという、まさに戦略の問題なのである
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■ブラウザにインターフェースをすべて依存するようになるとOSの存在意義が薄まる可能性がある
- ネットスケープの登場によってウィンドウズは単なるデバイスドライバなる(マーク・アンドリーセン)
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■マイクロソフトの失敗は広告経済モデルの軽視
- チーフ・ソフトウェア・アーキテクトとしてビル・ゲイツの後継となるレイ・オッジーは「インターネット・サービスによる破壊」という内部文書でマイクロソフトの失敗の原因を分析している
- その第一に、パッケージソフトの販売という伝統的な収益源にこだわって広告による経済モデルを軽視した結果、インターネットによる効率的な流通システムの開発に遅れをとった、という点をあげている
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■ビスタはIBMと同じになるかも知れない
- かつでのIBMは超高性能な大型コンピューターを守ろうとしてPCという破壊的イノベーションに敗れた
- 大した新機能もないのに大きなメモリを食うビスタは典型的な持続的イノベーションが、顧客期待価値を超えて余計な機能を付加している様相になっている
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■権利処理の自動化には定型的なプロセスの設計が必要
- 権利処理を自動化するには、まず権利を一本化し、許諾権を切り離して報酬請求権のみとし、ライセンス料に定価を定めるなど、定型的な処理手続きを作る必要がある
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■ウィキペディアのルールでは、最終的には精度は担保されない
- ウィキペディアは「最終的に信頼できる情報源」にリーチ出来ることを目的にしており、真理の提供を目的にしていない
- ここで言う信頼できる情報源とは別途定義されており、それはたとえばニューヨーク・タイムズやBBCで、実はウィキペディアは「信頼できない情報源」に分類されている
- このように明文化されたルールだけを根拠として正当性そのものの考察に踏み込まないこと、それが真理であるかどうかを問わない、という考え方は法学でいう実定法主義(Legal Positivism)であるが、これは仲間内メディアでは機能するが、信頼できるはずの情報源が信頼できないとき、機能しない
- たとえば従軍慰安婦に関して、ニューヨークタイムズもBBCも「慰安婦は日本軍の性奴隷制度だった」と報じており甚だしい事実誤認をしている
- こういうケースでは信頼できる情報源が信頼できない、ということになり、このルールは機能しない
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■百科事典はそもそも啓蒙思想の最大の成果であった
- 百科事典は18世紀にディドロとダランベールが編集した「百科全書」が最初
- 教会による知識の独占の時代を乗り越え、神学による学問支配を乗り越え、個人による自由な知の集積を作る作業の成果であった
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■多くの官庁や大企業の取り組みが失敗に終わったのに、一人の不良青年が作った2ちゃんねるが、これほど多くのユーザーをひきつけている事実は、失敗した大事業の関係者たちはもう一度考えて見るべき
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■マスコミの誇大なあおりにだまされてはいけない
- 治安が悪化して犯罪が増えている、とマスコミは煽るが実態はそうではない
- 統計上の犯罪の数は増えているが、その最大の原因は自転車の防犯登録によって、自転車泥棒を犯罪統計に入れるようになったことや、警察が犯罪被害の届出を受理s内「前裁き」がへったことなど、犯罪の「認知率」が上がったためで、こうした効果を除くと犯罪はほとんど増えていない
- さらに、殺人や強盗といった凶悪犯を見れば、戦後一貫して減っておりピーク時の1950年代の1/3以下になっている
- また検挙率が下がったというマスコミもあるが、これも母集団が増加したことと、軽微な犯罪や余罪の追及に要因をさかなくなったことでほぼ説明がつく
- また、いじめが社会問題化している、というトーンもおかしい
- 子供の自殺は70~80年代がピークで、このころも「いじめ」が最大の原因として騒がれた
- 現在、自殺件数はピーク時の半分であり、いじめが原因と見られるものも当時は毎年10件くらいと、現在の6件より多かった
- そもそも年間で6とか10とかいう数字からして、「稀有」な事件というべきで社会問題として取り上げる問題ではない
- うつ病で年間1万人以上自殺しているのは取り上げず、いじめや極悪犯罪など、耳目を集めやすいニュースを誇大に取り上げることで視聴率を上げようとしているだけである
- 付け加えれば、ごみ焼却炉から出るダイオキシンがワイドショーで一時期頻繁に取り上げられたが、これらの寿命への影響は1.3日であり、喫煙の10年以上、また受動喫煙の120に比べればはるかに影響は軽い・・・・ダイオキシンを騒ぐのならタバコを全面禁止にするキャンペーンをはればいい
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■NHKが数年前に行ったブラインドテストでは、ハイビジョンと通常放送の違いを見分けられる視聴者はほとんど居なかった
- はっきり差が出るのは色温度とコントラストで解像度は要素中もっとも最下位だった
- またたくさんのチャンネルでいろいろな番組が見たい、という要望は高かったもののいい画質でみたい、という要望もこれまた最下位だった
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■日本人は貧乏になってきた
- 1993年に日本の一人当たりGDPは3.50万ドルで世界一位だった
- 2005年には3.56万ドルでOECD諸国30カ国中14位に落ちた
- 最近の1$=120円前後という為替レートは購買力平価と見合う水準であるから、円が過小評価されているわけではない
- 1990年時点を基点として日本経済が年率2%(先進国の平均成長率)で伸びた場合と比較すると、現実のGDPはその90%程度でしかない
- 格差がどうこう言う前に、富が一割なくなったということなのだ
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■梶=深尾論文によれば、退出した企業のTFPは生き残った企業よりも高い
- TFP=全要素生産性とは、労働と資本の生産性をあわせた概念で産出量=GDPの成長率あら労働・資本投入量の増加率を引いたもの
- TFPは技術革新以外に、リストラによる労働生産性の向上や、効率の悪い企業からよい企業へ生産資源が移行することでも向上する
- 梶=深尾論文によれば、本来経営破たんすべきゾンビ企業が追い貸しで延命させる一方、資金調達の困難な新しい企業が成長できずに廃業することによって日本経済全体のTFPは大きく低下してしまっている・・・・つまり新陳代謝の低さが、長期不況の大きな原因だとしている
- これはほかの実証研究でも確認されている
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■格差は広がっていない
- ジニ係数が若干上がっているのは、もともと所得格差の大きい高齢者世帯の比率があがったことと、所得の少ない単身世帯が増えたことにある
- 小泉政権の市場原理主義により格差が拡大した、という分析は数値からは読み取れない
- 不平等度が上がったのは90年代の長期不況の時期で、景気が回復した2000年以降はまた平等化している
- したがって「日本が世界一の格差社会になった」という国会の小沢氏の発言はナンセンスである
- ただし、懸念される問題はある・・・それは若年層(18~25歳)の貧困率の向上である
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■弱者救済は気をつけないと新たな弱者を生む
- 弱者救済を主張する人の多くは、今雇用されている人の待遇だけを問題にし、労働市場から排除されている本当の弱者が視野に入っていない
- たとえばタクシーの規制緩和で運転手の労働条件が悪化したと批判されるが、規制緩和以後、全国で1.7万台のタクシーが増えており、一台のタクシーを二人で乗務するとすると3万人以上の雇用が創出されたことになる・・・この間、年収は8%ほど低下しているが収入ゼロだったかも知れない人が3万人も年収を得られるようになっているわけで、これを格差拡大といって非難するのは既得権益を守ろうとする労働組合側の見方である
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■市場メカニズムを無視した規制強化は、一見いいことをしているように見えるが回りまわって格差を拡大してしまう
- 経済学では雇用は需要と供給のバランスで決まる・・・こういう単純なことを理解できないやからが多すぎる
- 賃金を市場で決定される水準よりも高い水準に規制すると、既に雇用されている人の賃金は上がるが、労働需要は減るので超過供給=失業が生じる
- たとえば借地借家法で店子の権利を強く保護すると、弱い立場の店子が助かるように思える・・・・しかし実際にどういうことになるかというと家主は明け渡しを求めても店子が立ち退かないので、借家の供給が全体としては減少し、結果として需給のアンバランスから全体の家賃は上昇してしまう
- また、サラ金の上限金利を引き下げると、借金を抱えている人は一見助かるように見える・・・・消費者金融の債務者は大手五社で約一千万人いて、このうちの91%が20%以上の金利で借りている・・・・業界全体では債務者はこの1.5倍くらいだろうと想定されているが、中小の金利はほとんどが20%以上だから、上限金利が20%に規制されると1400万人は市場から締め出されることになる・・・・こうして締め出された人たちは、結局は闇金融に走らざるを得ず、さらに悲劇的な結末を迎えることになる
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■福祉国家と市場原理主義を対立概念として捉え、小さな政府を批判する図式は不毛
- 格差問題は、決まったパイをいかに公平に分配するかという問題として捉えるのは誤り
- 景気回復によって新卒採用の数がバブル期なみになったように、経済成長によってパイが大きくなれば、誰もが利益を得ることが出来る
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■何かが自由財になったように見えると、新たな財がボトルネックになる・・・この新たな財の希少性がビジネスの鍵になる
- 資本主義社会の前提は、資本が希少で労働は過剰だということ・・・・工場を建てて多くの労働者を集める資金をもっているのは限られた資本家だから、資本の希少性の価格として利潤が生まれる・・・これは普通の製造業では今も正しいが、情報の生産については状況が違う
- ムーアの法則によって1960年代から今日までに計算能力の価格は一億分の一になった・・・これは建設に100億円かかっていた工場が100円でできるようになったということだから、こうなると工場を作って労働者を集めるよりも、労働者が各自に工場を持って生産するほうが効率がよい、ということになり、それが現実になった
- つまり、昔はボトルネックは工場だったのだが、今のボトルネックは工場を扱う各人の時間になる・・・・そしてこの資源=ユーザーの時間を効率的に配分するテクノロジーが重要になる・・・膨大な情報の中からコンテンツを見つけ出して、希少な時間をひきつける権利=広告に新たなビジネスチャンスが生まれる
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■著作権保護期間の延長は国益にかなわない
- 70年が著作権保護の国際的なスタンダードだから、それに順ずるのが国益にかなう、という主張は論理的に間違っている
- 国際著作権条約では、保護期間50年の国の著作物が70年の国に輸出されても50年しか守られない一方、70年の国の著作物が50年の国に輸入されても50年しか守られない
- 日本において、著作物は輸入超過なので日本で著作権保護を20年延長して得られる国外での著作権収入よりも、輸入した著作物を国内で自由に複製できなくなることでの損失の方がはるかに大きい
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■日本のコンテンツ産業の問題は、法的なものではなく、分配の問題である・・・そのためにはとにかくビジネスでWin-Winに関係者がなれるモデルを築くことが必要
- 著作者の利益が法的に保護されていない、ということが問題の本質ではなく、利益がクリエイターに正当に分配されないことが問題
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■ライブドア事件の量刑の重さは不可解
- 主な起訴事実は50億円強の粉飾決算だった
- しかしカネボウは総額2000億円の粉飾を行っており、これと比べて量刑が不当に重いように思う
- 180億円の利益を水増しした日興コーディアルも上場維持されたし、1990年代には日本の銀行のほとんどが不良債権を分割償却するという粉飾決算を行っていたが、刑事事件になったのは日債銀・長銀といった破綻銀行だけである
- 堀江貴文被告は第一審で懲役2年6ヶ月の実刑判決を受けた・・・エンロンやワールドコムでは20年以上だったのに甘い、といったニュアンスでグローバルスタンダード論を振り回すやからも居るが、これも間違いで、こういう厳罰はアメリカだけの特殊な現象え、イギリスではベアリング証券をつぶしたニック・リーソンも4年で出所している
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■インサイダー規制は、サッカーのオフサイドのようなもの
- それ自体がルール違反ではないが、それを許すとゲームがつまらなくなる=資本家が集まらなくなる
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■霞ヶ関の最大の罪は優秀な人材をロックインしていること
- 社会を動かすのは人口の数%のエリートで、そういう人材がどれくらい戦略部門にいるかで国力は決まる
- 霞ヶ関は、戦後しばらくは日本最大の戦略部門だったがいまはお荷物になった
- 重要なのは老人の天下りにヤーヤー文句を言うことではなく、未来のある人材を霞ヶ関から脱出させてチャレンジャーを育てる人的資源の再配分である
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■個人をプロセッサ、組織をネットワークと考え、情報処理コストと通信コストのどちらが相対的に高いかによってネットワークの構造が変わる
- 情報処理コストがネットワークコストより相対的に高いときには情報を中央集権的に処理して端末に送ったほうがよい
- 逆に通信コストが高い場合は端末で分散処理して通信料を減らしたほうがいい
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■広告費だけでなく販促費を視野に入れることで大きな市場が期待できる
- 日本の広告費は約6兆円でGDPの約1%である・・・この水準は一定しており、この中で市場を食い合っている以上は大きな成長は期待できない
- 一方、日本における顧客へのマーケティング費用の総計は20兆円、世界全体では100兆円くらいあるとされている
- グーグルが狭義の広告産業を超えて従来のどぶ板営業を代替するものだとすれば、広告市場を越えた大きな成長機会をつかまえるかも知れない
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■インターネットに関連したビジネスではサービスのリリースタイミングが死命を決する重要性を持つ
- Web2.0という言葉はコンピューター中心からネットワーク中心への移行という概念を含んでいるが、これは昔サンやオラクルが流行らせようとした「ネットワーク・コンピューティング」とか「シン・クライアント」といった概念に近い
- これらの概念は論理的にはありえたのだろうが、いかんせんダイヤルアップの時期に出てきたのは早すぎた
- 普通、一度失敗したビジネスモデルは二度とものにならないが、ムーアの法則(半導体の集積度が18ヶ月で2倍になるという経験則)によってコストが3年で1/4になるITの世界では、3年前に赤字だったビジネスモデルが、いまやったら黒字、ということがありうる
- グーグルは検索エンジンのパイオニアでもなければ、検索広告の発明者でもない・・・問題はそういう技術をどう組み合わせてどういうタイミングで世に出すかという、まさに戦略の問題なのである
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■ブラウザにインターフェースをすべて依存するようになるとOSの存在意義が薄まる可能性がある
- ネットスケープの登場によってウィンドウズは単なるデバイスドライバなる(マーク・アンドリーセン)
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■マイクロソフトの失敗は広告経済モデルの軽視
- チーフ・ソフトウェア・アーキテクトとしてビル・ゲイツの後継となるレイ・オッジーは「インターネット・サービスによる破壊」という内部文書でマイクロソフトの失敗の原因を分析している
- その第一に、パッケージソフトの販売という伝統的な収益源にこだわって広告による経済モデルを軽視した結果、インターネットによる効率的な流通システムの開発に遅れをとった、という点をあげている
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■ビスタはIBMと同じになるかも知れない
- かつでのIBMは超高性能な大型コンピューターを守ろうとしてPCという破壊的イノベーションに敗れた
- 大した新機能もないのに大きなメモリを食うビスタは典型的な持続的イノベーションが、顧客期待価値を超えて余計な機能を付加している様相になっている
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■権利処理の自動化には定型的なプロセスの設計が必要
- 権利処理を自動化するには、まず権利を一本化し、許諾権を切り離して報酬請求権のみとし、ライセンス料に定価を定めるなど、定型的な処理手続きを作る必要がある
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■ウィキペディアのルールでは、最終的には精度は担保されない
- ウィキペディアは「最終的に信頼できる情報源」にリーチ出来ることを目的にしており、真理の提供を目的にしていない
- ここで言う信頼できる情報源とは別途定義されており、それはたとえばニューヨーク・タイムズやBBCで、実はウィキペディアは「信頼できない情報源」に分類されている
- このように明文化されたルールだけを根拠として正当性そのものの考察に踏み込まないこと、それが真理であるかどうかを問わない、という考え方は法学でいう実定法主義(Legal Positivism)であるが、これは仲間内メディアでは機能するが、信頼できるはずの情報源が信頼できないとき、機能しない
- たとえば従軍慰安婦に関して、ニューヨークタイムズもBBCも「慰安婦は日本軍の性奴隷制度だった」と報じており甚だしい事実誤認をしている
- こういうケースでは信頼できる情報源が信頼できない、ということになり、このルールは機能しない
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■百科事典はそもそも啓蒙思想の最大の成果であった
- 百科事典は18世紀にディドロとダランベールが編集した「百科全書」が最初
- 教会による知識の独占の時代を乗り越え、神学による学問支配を乗り越え、個人による自由な知の集積を作る作業の成果であった
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■多くの官庁や大企業の取り組みが失敗に終わったのに、一人の不良青年が作った2ちゃんねるが、これほど多くのユーザーをひきつけている事実は、失敗した大事業の関係者たちはもう一度考えて見るべき
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■マスコミの誇大なあおりにだまされてはいけない
- 治安が悪化して犯罪が増えている、とマスコミは煽るが実態はそうではない
- 統計上の犯罪の数は増えているが、その最大の原因は自転車の防犯登録によって、自転車泥棒を犯罪統計に入れるようになったことや、警察が犯罪被害の届出を受理s内「前裁き」がへったことなど、犯罪の「認知率」が上がったためで、こうした効果を除くと犯罪はほとんど増えていない
- さらに、殺人や強盗といった凶悪犯を見れば、戦後一貫して減っておりピーク時の1950年代の1/3以下になっている
- また検挙率が下がったというマスコミもあるが、これも母集団が増加したことと、軽微な犯罪や余罪の追及に要因をさかなくなったことでほぼ説明がつく
- また、いじめが社会問題化している、というトーンもおかしい
- 子供の自殺は70~80年代がピークで、このころも「いじめ」が最大の原因として騒がれた
- 現在、自殺件数はピーク時の半分であり、いじめが原因と見られるものも当時は毎年10件くらいと、現在の6件より多かった
- そもそも年間で6とか10とかいう数字からして、「稀有」な事件というべきで社会問題として取り上げる問題ではない
- うつ病で年間1万人以上自殺しているのは取り上げず、いじめや極悪犯罪など、耳目を集めやすいニュースを誇大に取り上げることで視聴率を上げようとしているだけである
- 付け加えれば、ごみ焼却炉から出るダイオキシンがワイドショーで一時期頻繁に取り上げられたが、これらの寿命への影響は1.3日であり、喫煙の10年以上、また受動喫煙の120に比べればはるかに影響は軽い・・・・ダイオキシンを騒ぐのならタバコを全面禁止にするキャンペーンをはればいい
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■NHKが数年前に行ったブラインドテストでは、ハイビジョンと通常放送の違いを見分けられる視聴者はほとんど居なかった
- はっきり差が出るのは色温度とコントラストで解像度は要素中もっとも最下位だった
- またたくさんのチャンネルでいろいろな番組が見たい、という要望は高かったもののいい画質でみたい、という要望もこれまた最下位だった
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■日本人は貧乏になってきた
- 1993年に日本の一人当たりGDPは3.50万ドルで世界一位だった
- 2005年には3.56万ドルでOECD諸国30カ国中14位に落ちた
- 最近の1$=120円前後という為替レートは購買力平価と見合う水準であるから、円が過小評価されているわけではない
- 1990年時点を基点として日本経済が年率2%(先進国の平均成長率)で伸びた場合と比較すると、現実のGDPはその90%程度でしかない
- 格差がどうこう言う前に、富が一割なくなったということなのだ
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■梶=深尾論文によれば、退出した企業のTFPは生き残った企業よりも高い
- TFP=全要素生産性とは、労働と資本の生産性をあわせた概念で産出量=GDPの成長率あら労働・資本投入量の増加率を引いたもの
- TFPは技術革新以外に、リストラによる労働生産性の向上や、効率の悪い企業からよい企業へ生産資源が移行することでも向上する
- 梶=深尾論文によれば、本来経営破たんすべきゾンビ企業が追い貸しで延命させる一方、資金調達の困難な新しい企業が成長できずに廃業することによって日本経済全体のTFPは大きく低下してしまっている・・・・つまり新陳代謝の低さが、長期不況の大きな原因だとしている
- これはほかの実証研究でも確認されている
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■格差は広がっていない
- ジニ係数が若干上がっているのは、もともと所得格差の大きい高齢者世帯の比率があがったことと、所得の少ない単身世帯が増えたことにある
- 小泉政権の市場原理主義により格差が拡大した、という分析は数値からは読み取れない
- 不平等度が上がったのは90年代の長期不況の時期で、景気が回復した2000年以降はまた平等化している
- したがって「日本が世界一の格差社会になった」という国会の小沢氏の発言はナンセンスである
- ただし、懸念される問題はある・・・それは若年層(18~25歳)の貧困率の向上である
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■弱者救済は気をつけないと新たな弱者を生む
- 弱者救済を主張する人の多くは、今雇用されている人の待遇だけを問題にし、労働市場から排除されている本当の弱者が視野に入っていない
- たとえばタクシーの規制緩和で運転手の労働条件が悪化したと批判されるが、規制緩和以後、全国で1.7万台のタクシーが増えており、一台のタクシーを二人で乗務するとすると3万人以上の雇用が創出されたことになる・・・この間、年収は8%ほど低下しているが収入ゼロだったかも知れない人が3万人も年収を得られるようになっているわけで、これを格差拡大といって非難するのは既得権益を守ろうとする労働組合側の見方である
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■市場メカニズムを無視した規制強化は、一見いいことをしているように見えるが回りまわって格差を拡大してしまう
- 経済学では雇用は需要と供給のバランスで決まる・・・こういう単純なことを理解できないやからが多すぎる
- 賃金を市場で決定される水準よりも高い水準に規制すると、既に雇用されている人の賃金は上がるが、労働需要は減るので超過供給=失業が生じる
- たとえば借地借家法で店子の権利を強く保護すると、弱い立場の店子が助かるように思える・・・・しかし実際にどういうことになるかというと家主は明け渡しを求めても店子が立ち退かないので、借家の供給が全体としては減少し、結果として需給のアンバランスから全体の家賃は上昇してしまう
- また、サラ金の上限金利を引き下げると、借金を抱えている人は一見助かるように見える・・・・消費者金融の債務者は大手五社で約一千万人いて、このうちの91%が20%以上の金利で借りている・・・・業界全体では債務者はこの1.5倍くらいだろうと想定されているが、中小の金利はほとんどが20%以上だから、上限金利が20%に規制されると1400万人は市場から締め出されることになる・・・・こうして締め出された人たちは、結局は闇金融に走らざるを得ず、さらに悲劇的な結末を迎えることになる
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■福祉国家と市場原理主義を対立概念として捉え、小さな政府を批判する図式は不毛
- 格差問題は、決まったパイをいかに公平に分配するかという問題として捉えるのは誤り
- 景気回復によって新卒採用の数がバブル期なみになったように、経済成長によってパイが大きくなれば、誰もが利益を得ることが出来る
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■何かが自由財になったように見えると、新たな財がボトルネックになる・・・この新たな財の希少性がビジネスの鍵になる
- 資本主義社会の前提は、資本が希少で労働は過剰だということ・・・・工場を建てて多くの労働者を集める資金をもっているのは限られた資本家だから、資本の希少性の価格として利潤が生まれる・・・これは普通の製造業では今も正しいが、情報の生産については状況が違う
- ムーアの法則によって1960年代から今日までに計算能力の価格は一億分の一になった・・・これは建設に100億円かかっていた工場が100円でできるようになったということだから、こうなると工場を作って労働者を集めるよりも、労働者が各自に工場を持って生産するほうが効率がよい、ということになり、それが現実になった
- つまり、昔はボトルネックは工場だったのだが、今のボトルネックは工場を扱う各人の時間になる・・・・そしてこの資源=ユーザーの時間を効率的に配分するテクノロジーが重要になる・・・膨大な情報の中からコンテンツを見つけ出して、希少な時間をひきつける権利=広告に新たなビジネスチャンスが生まれる
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■著作権保護期間の延長は国益にかなわない
- 70年が著作権保護の国際的なスタンダードだから、それに順ずるのが国益にかなう、という主張は論理的に間違っている
- 国際著作権条約では、保護期間50年の国の著作物が70年の国に輸出されても50年しか守られない一方、70年の国の著作物が50年の国に輸入されても50年しか守られない
- 日本において、著作物は輸入超過なので日本で著作権保護を20年延長して得られる国外での著作権収入よりも、輸入した著作物を国内で自由に複製できなくなることでの損失の方がはるかに大きい
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■日本のコンテンツ産業の問題は、法的なものではなく、分配の問題である・・・そのためにはとにかくビジネスでWin-Winに関係者がなれるモデルを築くことが必要
- 著作者の利益が法的に保護されていない、ということが問題の本質ではなく、利益がクリエイターに正当に分配されないことが問題
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■ライブドア事件の量刑の重さは不可解
- 主な起訴事実は50億円強の粉飾決算だった
- しかしカネボウは総額2000億円の粉飾を行っており、これと比べて量刑が不当に重いように思う
- 180億円の利益を水増しした日興コーディアルも上場維持されたし、1990年代には日本の銀行のほとんどが不良債権を分割償却するという粉飾決算を行っていたが、刑事事件になったのは日債銀・長銀といった破綻銀行だけである
- 堀江貴文被告は第一審で懲役2年6ヶ月の実刑判決を受けた・・・エンロンやワールドコムでは20年以上だったのに甘い、といったニュアンスでグローバルスタンダード論を振り回すやからも居るが、これも間違いで、こういう厳罰はアメリカだけの特殊な現象え、イギリスではベアリング証券をつぶしたニック・リーソンも4年で出所している
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■インサイダー規制は、サッカーのオフサイドのようなもの
- それ自体がルール違反ではないが、それを許すとゲームがつまらなくなる=資本家が集まらなくなる
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■霞ヶ関の最大の罪は優秀な人材をロックインしていること
- 社会を動かすのは人口の数%のエリートで、そういう人材がどれくらい戦略部門にいるかで国力は決まる
- 霞ヶ関は、戦後しばらくは日本最大の戦略部門だったがいまはお荷物になった
- 重要なのは老人の天下りにヤーヤー文句を言うことではなく、未来のある人材を霞ヶ関から脱出させてチャレンジャーを育てる人的資源の再配分である
Monday, September 10, 2007
9/11 デジタル・コンバージェンスの衝撃 齋藤茂樹
·
■オンデマンドテレビが浸透すると現在のウィンドウ展開の仕組みも変わるかもしれない
- 現在は大ヒット作があるとだんだんにDVD化、テレビ放映と収益力の少ないウィンドウにシフトしていく
- それに対して、オンデマンドテレビはニッチに向けた情報発信が出来るので華氏911みたいなニッチコンテンツを、最初にオンデマンドテレビでリリースしておいて、人気が出るようならネットワークのロードショーにもっていくという低リスクのコンテンツビジネス展開が出来るかもしれない
·
■ライブドアが狙ったのはポニーキャニオンのコンテンツではなく、コンテンツを作って売る仕組みである
- もともとポニーキャニオンがもっているのはDVD化権であってブロードバンドでの配信権を持っているわけではない・・・そんなことは彼らも知っていたはず
- 彼らが狙っていたのは自社で作ったコンテンツをポニーキャニオンの流通ルートに乗っけて販売すること・・・さらには自社で開発するコンテンツにポニーキャニオンの知恵を入れたかったということ
·
■オプティキャストというテクノロジーを使うと、通常のチャンネルなら500、ハイビジョンでも100チャンネルほどを有線で提供できる
- オプティキャストとは、同軸ケーブルの代わりに光ファイバーを使って光周波数多重方式と呼ばれる技術のこと
·
■パソコンをテレビとしても使う、という考え方には無理がある
- もともとパソコンに用いられているメモリーは画像処理には向いていない
·
■オンデマンドテレビで人気の出るコンテンツは、1:キラーコンテンツ、2:過去コンテンツ、3:教育、4:草の根、だろう
·
■ 草の根コンテンツで言えば、たとえばニッチに人気のあるインディーズのバンドなどはありうる
- 全国的な人気のあったインディーズバンド、モンゴル800は、いまでは沖縄に活動拠点を置きながら定期的にCDを発売し、ライブ活動を行っている
- 彼らのように、地元密着型で活動したいと考えているインディーズバンドは多い
- 後は、孫の映像を見たがる祖父母と、それらの映像を共有するといった仕組みがありうる
·
■ラジオ放送は、もともと一対多の無線通信というコンセプトだった
- もともと無線は一対一の通信だった
- これを一対多にすれば布教に利用できると考えた牧師のチャールズ・カフリンが、一対多の「放送」を開始した
·
■アメリカのテレビ業界を特徴付けているルールに「フィンシンルール」と「プライムタイムアクセスルール」の二つがある
- フィンシンルールとは、外部制作会社の作ったコンテンツの権利を、テレビ局は保有できない、としたルールである
- プライムタイムアクセスルールとは、4時間に1時間は三大ネットワークの作った番組以外の番組を流さなければいけないというもの
·
■日本における「キャズム」は利用者数300~500万人くらいのところらしい
- DVD、ISP、携帯電話、ADSLでは利用者が100万人を超えるまでに数年を要しながら、その翌年には500~800万人に利用者が拡大し、さらにその次の年には1500~2000万人まで一気に普及する、という非常に似通ったカーブを描いている
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■オンデマンドテレビが浸透すると現在のウィンドウ展開の仕組みも変わるかもしれない
- 現在は大ヒット作があるとだんだんにDVD化、テレビ放映と収益力の少ないウィンドウにシフトしていく
- それに対して、オンデマンドテレビはニッチに向けた情報発信が出来るので華氏911みたいなニッチコンテンツを、最初にオンデマンドテレビでリリースしておいて、人気が出るようならネットワークのロードショーにもっていくという低リスクのコンテンツビジネス展開が出来るかもしれない
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■ライブドアが狙ったのはポニーキャニオンのコンテンツではなく、コンテンツを作って売る仕組みである
- もともとポニーキャニオンがもっているのはDVD化権であってブロードバンドでの配信権を持っているわけではない・・・そんなことは彼らも知っていたはず
- 彼らが狙っていたのは自社で作ったコンテンツをポニーキャニオンの流通ルートに乗っけて販売すること・・・さらには自社で開発するコンテンツにポニーキャニオンの知恵を入れたかったということ
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■オプティキャストというテクノロジーを使うと、通常のチャンネルなら500、ハイビジョンでも100チャンネルほどを有線で提供できる
- オプティキャストとは、同軸ケーブルの代わりに光ファイバーを使って光周波数多重方式と呼ばれる技術のこと
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■パソコンをテレビとしても使う、という考え方には無理がある
- もともとパソコンに用いられているメモリーは画像処理には向いていない
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■オンデマンドテレビで人気の出るコンテンツは、1:キラーコンテンツ、2:過去コンテンツ、3:教育、4:草の根、だろう
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■ 草の根コンテンツで言えば、たとえばニッチに人気のあるインディーズのバンドなどはありうる
- 全国的な人気のあったインディーズバンド、モンゴル800は、いまでは沖縄に活動拠点を置きながら定期的にCDを発売し、ライブ活動を行っている
- 彼らのように、地元密着型で活動したいと考えているインディーズバンドは多い
- 後は、孫の映像を見たがる祖父母と、それらの映像を共有するといった仕組みがありうる
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■ラジオ放送は、もともと一対多の無線通信というコンセプトだった
- もともと無線は一対一の通信だった
- これを一対多にすれば布教に利用できると考えた牧師のチャールズ・カフリンが、一対多の「放送」を開始した
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■アメリカのテレビ業界を特徴付けているルールに「フィンシンルール」と「プライムタイムアクセスルール」の二つがある
- フィンシンルールとは、外部制作会社の作ったコンテンツの権利を、テレビ局は保有できない、としたルールである
- プライムタイムアクセスルールとは、4時間に1時間は三大ネットワークの作った番組以外の番組を流さなければいけないというもの
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■日本における「キャズム」は利用者数300~500万人くらいのところらしい
- DVD、ISP、携帯電話、ADSLでは利用者が100万人を超えるまでに数年を要しながら、その翌年には500~800万人に利用者が拡大し、さらにその次の年には1500~2000万人まで一気に普及する、という非常に似通ったカーブを描いている
Monday, September 3, 2007
読書日記:ヒトデはクモよりなぜ強い
9/3 ヒトデはクモよりなぜ強い オリ・ブラフマン/ロッド・A・ベックストローム
·
■エルナン・コルテスはアステカを、フランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍はインカ帝国を滅ぼした
·
■そのまま快進撃しながら北上したスペイン軍はアパッチ族と対戦し、敗れた
·
■スペイン軍がアパッチに敗れた理由は、アパッチの組織の分権構造に起因する
- アパッチ族が、インカやアステカになかった秘密の武器を持っていたわけではない
- アステカやインカにはトップダウン・中央集権のシステムがあり、これを破壊する・・・つまりアステカにおけるモンテスマ二世、インカ帝国におけるアタワルパ皇帝を殺すことで大混乱を引き起こし、文明を崩壊させた
- 具体的には、コルテスは当時世界最先端の都市システムを持っていたアステカの首都:テノチティトランに食料を持ち込めないようにし、道路と送水路を遮断し、24万人の住人を餓死させた
- しかしアパッチにはそのような中央集権のシステムやインフラが無かった
·
■アパッチには権力を持つ統治者はいないが、ナンタンと呼ばれる精神的・文化的な指導者がおり、これが行動で規範を示し、それに他人が従うことで一種のコーディネイションが生まれていた
- ナンタンは権力を持たない
- 市場最も有名なナンタンがアメリカを相手に何十年も部族を守ったジェロニモである
- ジェロニモは戦いの指揮を執らない・・・ただ武器をもってアメリカと戦う姿勢を見せるだけである・・・それに周りの人が「彼が戦うなら」といってついてった
·
■つまりアパッチの意思決定は分散的である・・・これはつまり誰も重要なことを決定していないと言えるが、一方でそこらじゅうで重要なことが決定されているとも言える
·
■アパッチは攻撃を受けるとより細かいユニットに分かれてさらに分散度を高める・・・・これはナップスターのようなPtoPサービスに非常によく似ている
·
■クモは頭を切り落とすと死んでしまうが、ヒトデにはアタマが無い・・・そして半分に切り離すとそれは二匹のヒトデになってしまう
- ヒトデは神経回路網でできているからそういうことが可能
- リンキアという腕の長いヒトデは、切り落とされた片割れもヒトデになる
- ヒトデが、全体としての動きをどうコーディネイトしているのか、という点についてはまだわかっていない
·
■ヒトデに似た組織は、世の中に結構あってなるほどうまくいっているのが多い
- たとえばアルコホリックス・アノニマスはオーナーもいないし出入りも自由だが、非常に強力なアル中治療のコミュニティである
·
■業界内で分散化の度合いが高まると、通常は業界内に留保される利益は少なくなる
- PtoPサービスによって大手レコード業界は売り上げの25%を失ったが、それがPtoPサービス業者に入ったわけではない・・・この25%は文字通り、“失われた”のである
·
■権限を分散させると混乱が生じるが、一方でそこには創造性も生まれる
·
■分散されたネットワークの人々の価値を引き出す人を触媒というが、触媒の人に共通して見られる特徴は「説得しないで共感する」という力の持ち主であるということだ
- 情熱的なのと押しが強いのは違う・・・触媒の人々は人に無理強いするのではなく、肯定することで人を仲間にしていく
- 著名な心理学者のカール・ロジャースは、専門家気取りの助言は、相手のためを思ったものであったとしても逆効果だと警告している・・・強く説得的に言われると、人は心を閉じてしまい、変わろうとしなくなってしまう
- ロジャースは言う・・・人の態度を変えさせたければ、相手の経験を肯定するのがもっとも効果的であると
·
■あいまいさに対して寛容であることは触媒にとって必須の性質である
- 触媒の人にインタビューすると、しばしば「わからない」という返答が来る
- 実際には、わからない、というよりわかりようがない、というのがその答えである
- わかりようがない状態が通常であるのでこれに秩序を求めたりしてはいけない
·
■ヒトデ型組織を攻撃するには、頭を切り離すのではなく、組織の末端が動くインセンティブを取り除くことが有効である
- ジャミイボラ信託は、ケニアのスラム:キベラで貧困に苦しむ人達用に、自分でビジネスを始める、自己投資をする人たちのための資金提供を行っている
- この信託によって犯罪やテロに手を染めようとしていた若者がまっとうな人生を歩む道に帰ってきている
- そして、この仕組みはアルカイダに対する最高の攻撃になっている・・・・スラムは絶望的な場所であり、望みが無いからテロでもやるか、といったように多くのテロリストが生まれてきた・・・しかし今は彼らはテロに手を染めない・・・なぜなら彼らには「希望」があるから
·
■アルカイダを壊滅させるためには機関銃ではなく希望が必要なのである
- アメリカがアルカイダに宣戦布告して軍隊を派遣したのはまったくアルカイダという組織の形質をまったく理解していないから
- どこにもアタマが無い、どこにも急所が無い組織である以上、どこを攻撃してもアメーバ状に変形するだけで意味が無い
- それよりも、アルカイダの組織の末端を形成する絶望した若者たちに「希望」を与えることでテロ活動を行うための誘引を失わせしめれば、アルカイダは自然に崩壊する
- これは貧困を救うのに食べ物を与えるのではなく、食べ物の作り方を教えてあげるのに似ていないか?
·
■君たちのやっていることを止めなさい、というお説教を「こんなのクールじゃないよね」といった、ティーンエイジャーのまねをしようとした大人たちから聞くほどいやなことは無い
- レーガン元大統領夫人の薬物撲滅キャンペーンの「Just say no」も海賊版撲滅ののキャンペーンもみな失敗した
- 何かイデオロギーができてしまったらそれを真正面から変えるのは難しい
- ではどうやったら変えるのか?
·
■アパッチは、長らくスペインやアメリカの攻撃に耐えたにもかかわらず、ある方策によって簡単に崩壊してしまった
- 文化人類学者のトム・ネビンズは解説する「アパッチ族は1914年までずっと脅威だった・・・そこで、アメリカ人はアパッチ族のリーダーであるナンタンに蓄牛を与えて、その社会を崩壊させたのです・・・実に簡単なことでした」
- いったんナンタンが牛という財産を手に入れると、それまで観念上のものだった彼らのリーダーシップは、物質的な差異・・・持てるものと持たざるものに変化した
- 以前は自らの行動で規範となっていた人物が、蓄牛を分け与えたり、分け与えなかったりすることでアパッチ族の人々に報いたり罰したりするようになった
- 権威的な力を持つとナンタンたちは創設されたアパッチ族内部の議会の議席を争うようになり、米国企業のエグゼクティブのような行動をとり始めた
- アパッチ族の人々も、より多くの資源配分を要求するようになり思い通りに分配されないと気を悪くしたり、争いが起こるようになった
- こうして中央集権的な権力構造が生まれた結果、アメリカ社会にアパッチ族は取り込まれることになったのである
·
■アルコホリック・アノニマスでも同様のことがおき、組織は変質した
- アルコホリック・アノニマスでは、それまでの共和制的な運営が、いったん発行した本がベストセラーになって莫大な印税が組織に入るにつれ、その分配をめぐって権力争いが発生し、やがて権力の集中化が起こった・・・
- これはウィキペディアでも起こる可能性がある
·
■新しい世界を予測するのはいつも難しい・・・
- ポール・スターは著書「クリエーション・オブ・ザ・メディア」でこう述べている
- 1917年に権力を握った旧ソ連の支配者は、当時、ほかの多くの国がそうしていたように電話ネットワークに投資することもできた
- しかし彼らはそうせず、当時登場してきたばかりの別のテクノロジーに力を注いだ・・・それは拡声器である
- ソ連は国中に電話線を張り巡らせる代わりに、国のいたるところに数え切れないほどの拡声器を設置し、愛国的な歌や共産党の演説を流したいときにすぐさま流したいだけ流せるインフラを作った
- 経済発展のため、知の創発のためには一般個人のコミュニケーションが重要であるにもかかわらず・・・・
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■エルナン・コルテスはアステカを、フランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍はインカ帝国を滅ぼした
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■そのまま快進撃しながら北上したスペイン軍はアパッチ族と対戦し、敗れた
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■スペイン軍がアパッチに敗れた理由は、アパッチの組織の分権構造に起因する
- アパッチ族が、インカやアステカになかった秘密の武器を持っていたわけではない
- アステカやインカにはトップダウン・中央集権のシステムがあり、これを破壊する・・・つまりアステカにおけるモンテスマ二世、インカ帝国におけるアタワルパ皇帝を殺すことで大混乱を引き起こし、文明を崩壊させた
- 具体的には、コルテスは当時世界最先端の都市システムを持っていたアステカの首都:テノチティトランに食料を持ち込めないようにし、道路と送水路を遮断し、24万人の住人を餓死させた
- しかしアパッチにはそのような中央集権のシステムやインフラが無かった
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■アパッチには権力を持つ統治者はいないが、ナンタンと呼ばれる精神的・文化的な指導者がおり、これが行動で規範を示し、それに他人が従うことで一種のコーディネイションが生まれていた
- ナンタンは権力を持たない
- 市場最も有名なナンタンがアメリカを相手に何十年も部族を守ったジェロニモである
- ジェロニモは戦いの指揮を執らない・・・ただ武器をもってアメリカと戦う姿勢を見せるだけである・・・それに周りの人が「彼が戦うなら」といってついてった
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■つまりアパッチの意思決定は分散的である・・・これはつまり誰も重要なことを決定していないと言えるが、一方でそこらじゅうで重要なことが決定されているとも言える
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■アパッチは攻撃を受けるとより細かいユニットに分かれてさらに分散度を高める・・・・これはナップスターのようなPtoPサービスに非常によく似ている
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■クモは頭を切り落とすと死んでしまうが、ヒトデにはアタマが無い・・・そして半分に切り離すとそれは二匹のヒトデになってしまう
- ヒトデは神経回路網でできているからそういうことが可能
- リンキアという腕の長いヒトデは、切り落とされた片割れもヒトデになる
- ヒトデが、全体としての動きをどうコーディネイトしているのか、という点についてはまだわかっていない
·
■ヒトデに似た組織は、世の中に結構あってなるほどうまくいっているのが多い
- たとえばアルコホリックス・アノニマスはオーナーもいないし出入りも自由だが、非常に強力なアル中治療のコミュニティである
·
■業界内で分散化の度合いが高まると、通常は業界内に留保される利益は少なくなる
- PtoPサービスによって大手レコード業界は売り上げの25%を失ったが、それがPtoPサービス業者に入ったわけではない・・・この25%は文字通り、“失われた”のである
·
■権限を分散させると混乱が生じるが、一方でそこには創造性も生まれる
·
■分散されたネットワークの人々の価値を引き出す人を触媒というが、触媒の人に共通して見られる特徴は「説得しないで共感する」という力の持ち主であるということだ
- 情熱的なのと押しが強いのは違う・・・触媒の人々は人に無理強いするのではなく、肯定することで人を仲間にしていく
- 著名な心理学者のカール・ロジャースは、専門家気取りの助言は、相手のためを思ったものであったとしても逆効果だと警告している・・・強く説得的に言われると、人は心を閉じてしまい、変わろうとしなくなってしまう
- ロジャースは言う・・・人の態度を変えさせたければ、相手の経験を肯定するのがもっとも効果的であると
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■あいまいさに対して寛容であることは触媒にとって必須の性質である
- 触媒の人にインタビューすると、しばしば「わからない」という返答が来る
- 実際には、わからない、というよりわかりようがない、というのがその答えである
- わかりようがない状態が通常であるのでこれに秩序を求めたりしてはいけない
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■ヒトデ型組織を攻撃するには、頭を切り離すのではなく、組織の末端が動くインセンティブを取り除くことが有効である
- ジャミイボラ信託は、ケニアのスラム:キベラで貧困に苦しむ人達用に、自分でビジネスを始める、自己投資をする人たちのための資金提供を行っている
- この信託によって犯罪やテロに手を染めようとしていた若者がまっとうな人生を歩む道に帰ってきている
- そして、この仕組みはアルカイダに対する最高の攻撃になっている・・・・スラムは絶望的な場所であり、望みが無いからテロでもやるか、といったように多くのテロリストが生まれてきた・・・しかし今は彼らはテロに手を染めない・・・なぜなら彼らには「希望」があるから
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■アルカイダを壊滅させるためには機関銃ではなく希望が必要なのである
- アメリカがアルカイダに宣戦布告して軍隊を派遣したのはまったくアルカイダという組織の形質をまったく理解していないから
- どこにもアタマが無い、どこにも急所が無い組織である以上、どこを攻撃してもアメーバ状に変形するだけで意味が無い
- それよりも、アルカイダの組織の末端を形成する絶望した若者たちに「希望」を与えることでテロ活動を行うための誘引を失わせしめれば、アルカイダは自然に崩壊する
- これは貧困を救うのに食べ物を与えるのではなく、食べ物の作り方を教えてあげるのに似ていないか?
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■君たちのやっていることを止めなさい、というお説教を「こんなのクールじゃないよね」といった、ティーンエイジャーのまねをしようとした大人たちから聞くほどいやなことは無い
- レーガン元大統領夫人の薬物撲滅キャンペーンの「Just say no」も海賊版撲滅ののキャンペーンもみな失敗した
- 何かイデオロギーができてしまったらそれを真正面から変えるのは難しい
- ではどうやったら変えるのか?
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■アパッチは、長らくスペインやアメリカの攻撃に耐えたにもかかわらず、ある方策によって簡単に崩壊してしまった
- 文化人類学者のトム・ネビンズは解説する「アパッチ族は1914年までずっと脅威だった・・・そこで、アメリカ人はアパッチ族のリーダーであるナンタンに蓄牛を与えて、その社会を崩壊させたのです・・・実に簡単なことでした」
- いったんナンタンが牛という財産を手に入れると、それまで観念上のものだった彼らのリーダーシップは、物質的な差異・・・持てるものと持たざるものに変化した
- 以前は自らの行動で規範となっていた人物が、蓄牛を分け与えたり、分け与えなかったりすることでアパッチ族の人々に報いたり罰したりするようになった
- 権威的な力を持つとナンタンたちは創設されたアパッチ族内部の議会の議席を争うようになり、米国企業のエグゼクティブのような行動をとり始めた
- アパッチ族の人々も、より多くの資源配分を要求するようになり思い通りに分配されないと気を悪くしたり、争いが起こるようになった
- こうして中央集権的な権力構造が生まれた結果、アメリカ社会にアパッチ族は取り込まれることになったのである
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■アルコホリック・アノニマスでも同様のことがおき、組織は変質した
- アルコホリック・アノニマスでは、それまでの共和制的な運営が、いったん発行した本がベストセラーになって莫大な印税が組織に入るにつれ、その分配をめぐって権力争いが発生し、やがて権力の集中化が起こった・・・
- これはウィキペディアでも起こる可能性がある
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■新しい世界を予測するのはいつも難しい・・・
- ポール・スターは著書「クリエーション・オブ・ザ・メディア」でこう述べている
- 1917年に権力を握った旧ソ連の支配者は、当時、ほかの多くの国がそうしていたように電話ネットワークに投資することもできた
- しかし彼らはそうせず、当時登場してきたばかりの別のテクノロジーに力を注いだ・・・それは拡声器である
- ソ連は国中に電話線を張り巡らせる代わりに、国のいたるところに数え切れないほどの拡声器を設置し、愛国的な歌や共産党の演説を流したいときにすぐさま流したいだけ流せるインフラを作った
- 経済発展のため、知の創発のためには一般個人のコミュニケーションが重要であるにもかかわらず・・・・
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