Wednesday, September 19, 2007

はじめての構造主義

9/19 はじめての構造主義 橋爪大三郎 


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■ソシュールはそれまでの言語学がアホくさかった
- ソシュール以前の言語学は、言語が現代に至るまでの変化の過程をつぶさにトレースしていくことがメインの仕事だった
- しかし、そんなことでいいのか、とソシュールは思った
- 人間と言語は切っても切れない関係にある・・・言語を通じて人間のより深い理解へといたるような学問・・・それを言語学としようじゃないか、と彼は思った
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■言語が切れるように、人は世界を切っていることをソシュールは見つけた
- 日本では湯と水は違う言葉なのに、英語では湯そのものを表す単語は無い
- ものがあって、それにしたがって世の中を切っているのではなく、言葉によって世の中を切っているのが人間
- Aさんの“あ”とBさんの“あ”では違う音なのに、我々は“あめ”という言葉を聞き分けられる・・・重要なのは音そのものではなく、その音が作り出す“差異”にある・・・言語とは結局は“差異の体系”である
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■レヴィ・ストロースの「親族は女性を交換する仕組みである」という仮説にもっとも影響をあたえたのはモースの研究だろう
- モースは「贈与論」というユニークな論文を書いた
- 彼は贈与が未開社会でとても大きな意味を持っていることを最初に注目した学者だった
- モースは、ニューギニアの沖合いにある贈与の慣習「クラ交換」に着目した
- クラは貝殻とか花で飾られたちょっとした器物だが、これを交換するために各部族は命がけでカヌーを漕ぎ出す・・・この交換のために死ぬこともしばしばあったらしい・・・・
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■価値があるから交換するのではなく、交換するから価値があることに気づいた
- なんでこんなつまんないものを命がけで・・・・と思う前に、我々も日本銀行券と書かれた紙っぺらをありがたく交換していることを思い出さなければいけない
- つまり、価値があるから交換しているのではなく、交換しているから価値があるのだ
- 女性もこれと同じで、部族間で交換のための財とされているのである
- 近親相姦が原始社会においても禁止されているのは、この交換財としての役割を維持するためである
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■ギリシヤ人はヒマだったが頭が良かった・・・公理をつくったのだから
- 由緒正しいギリシア人は働いちゃいけなかったので、ヒマをつぶすために証明問題に没頭し、ほとんどの証明を終わって証明の網の目を作ってしまった
- この証明を良く見て見ると枝分かれのような構造になっており、一番基本的な事実はほかの事実=定理をしょうめいするばっかりで自分はちっとも証明されていないことに気づいた
- 証明の枝分かれの、ちょうど出発点になっているところについては、仕方ないので「理屈抜き、証明抜きで正しいことにしよう」ということになった・・・これを公理という
- 公理がよそから証明されると非常にかっこ悪いので、よくよく吟味が重ねられ、最終的には5つに絞り込まれた・・・この5つの公理から幾何学の知識はすべて証明(の連鎖)によって跡付けることができるようになった
- このことを記した本がユークリッドの「幾何学原本」である・・・実はユークリッドが実在の人物かどうかよくわかっていないのだが、この本は実在しており、以後二千年にわたってすべての学問の手本となった・・・本当に見事で美しい本である
- ちなみにユークリッドの幾何学原本には次の5つの公理が載っている
- 1:どんな二点のあいだにも、一本の線分が引ける
- 2:線分を好きなだけ延長できる
- 3:好きな点を中心に、好きな半径の円を描くことが出来る
- 4:直角はどれも等しい
- 5:直線外の一点を通って、その直線に平行な直線を、一歩だけ引ける
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■アリストテレスはすごい
- アリストテレスは論理学を一人で作ってしまった
- 三段論法の薦め方を何通りにも分けて、推論が正しい場合、間違いである場合をいちいち確かめて一覧表にした
- 記号論理学が出来てからのここ100年くらいで古臭くなってしまったが、それまで二千年のあいだ絶対的な権威を誇ってきた・・・スゴイ!
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■代数学と幾何学を融合したのはデカルト
- ギリシア人は幾何学は大好きだったが算術は大嫌いだった・・・それは奴隷や商人の仕事だったからである・・・そのためギリシアでは代数学はぜんぜん進化しなかった
- 代数学を進化させたのはアラビア人である・・・
- 代数学と幾何学を結びつけたのはデカルトである・・・彼は17世紀の人だがある時急にひらめいて座標軸というものを思いつき、平面の各店をx座標、y座標の組み合わせで示してみると、なんと円錐曲線が二次方程式で表せることに気づいた
- そんな具合にして、あれよあれよという数ヶ月の間に、解析幾何学をこさえてしまった

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