Monday, January 21, 2008

創造力 西堀榮三郎

創造力 西堀榮三郎 

西堀さんは京都大学の工学助教授から東芝に転じたエンジニアだが、最終的には南極越冬隊の体調をやったり70歳過ぎてチョモランマの登頂隊の隊長になったりと、なんともダイナミックな人生を送った人だ。前回読んだアメリカズ・カップの本が面白くて、その中で何度も紹介されていたので読んでみたら実に物事の本質をうまく捉えているなと感じた。こういう形で興味のある人や事象が連鎖していくと、面白くてためになる読書が続く。この本を読んで、アムンゼンとスコットの北極探検の成功失敗を分けたポイントはなんだったのか、すごく興味が出てきたのでアマゾンでまた一発クリックしてしまった。

■何事も本質を理解しようと思ったらファミリアにならなくては
- エンジンだったら図面で学ぶよりも、手を汚して分解してみたり、組み立ててみたりして、いろいろやって初めて「うーん、なるほど」と思うまでファミリアにならなくては本質はわからないもの
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■標準化=水平部分は現場、改善・開発=垂直部分は研究部とか技術部、というのは考え方の基本としてはわかるが、組織の中には両方をダブって持っている部門が必要
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■情報の本質は「並び方」にある
- アルファベットは27文字だが、そのいくつかを取り出して並び方を変えると意味が生まれる
- 物質は原子が、人間は遺伝子が、それぞれ並び方を変えることでユニークな個性を生じせしめている
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■シューハートの管理技法のポイントは「ばらつき」にある
- 3シグマ法で管理限界線を計算し、平均値を中心に二本の線を引いて、不良率の打点がそれを超えているケースを問題とする
- コントロールはあくまで管理限界線の外側の打点に対してであり、必要としない恒常的なバラツキに対してまでコントロールすることはない
- しなくてもいいコントロールをシューハートは「オーバーコントロール」といって厳しく戒めていた
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■作った人に検査させることによって、責任感が生まれ、自発的な改善がなされることがよくある
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■上役より幅役
- 偉いわけではないから上役ではない
- むしろ考えている広さが広い、時間軸が長い、ということだから幅役と言うべき
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■スコット隊は「あわて者の誤謬」の典型例である
- 計画段階でのスコット隊の致命的な過誤のひとつとして荷物運搬の主力を馬においた点にある
- これは依然に犬を使ったときに何らかの理由で犬が死んでしまって役に立たなかったという未熟さゆえの経験から来ている
- 「たまたま」犬が役に立たなかった、という学びが「そもそも」犬は役に立たない、と理解した点にスコットの誤りがあった
- 統計的品質管理ではこのような誤りを「第一種の誤り」として強く戒めている
- 付け加えれば、スコットは迷いもあった・・・犬をまったくあきらめたわけではなく、馬を主力にして雪上車と犬ゾリを併用した運搬を考えていたのである
- これは事前の調査が十分にできず、どれがよいかという点について確信が持てなかったことが伺えるのだが、結果的には馬も犬も雪上車もすべて役に立たず、犬を乗せたそりを人間が引いていくという信じがたい状況に陥ってしまった
- これがダメならアレ、という手段は非難されるべきではないが、それをするためには全ての手段が十分に使えるという確信のもとにとられなければならない
- スコットの場合、万事が中途半端であった
- 例えば雪上車を持っていったのに、修理できる人間は連れて行かなかったり、馬に食べさせるためのペミカン式の食料を研究しておくような思慮にも欠けていた

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