Wednesday, April 23, 2008

アートと価格

これまでアートに関しては価格はあまり重要な市場拡大要素ではない、と言われてきました。

確かにクラシックのコンサート市場においてはあまりチケットの値段を下げても需要は拡大しないことが経験則で分かっています。

でも最近そうじゃないんじゃないか、と思い始めています。

きっかけは東京で毎年GWに行われるクラシックのお祭り、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの取組みです。おととしは30万人近く集めたこのイベント、半分以上がクラシック初体験だったそうなのですが、チケット価格は1500~2000円前後と、メチャクチャ安いのです。

例えば美術専門出版社のTASCHENやクラシック専門のCDレーベル等、それまで高価で当たり前だった市場に安さを売りにして参入して需要を拡大したところがありますが、同じですね。

ラ・フォル~の成功事例を見ると、価格は関係ない、というこれまでのアート界の通説が実は間違っていたのではないか、という気がします。

ミクロ経済学的に言えば、需要と供給のバランスは価格によって調整されます。価格を下げても需要が増加しないことを、需要の価格弾力性が低い、といいますが、クラシック界ではまさにそれが言われていたわけです。

ところが、どうもそうでないらしい。ここでかぎになっているのが、費用対効果の効果側の問題ではないかと思っています。価格が低くなって需要が増加するのは費用対効果が改善するからです。

クラシック界において値下げがあまり効かなかった、というのは費用対効果が既に高い人に対して、更に費用を下げる、というアプローチを取りつつ、費用対効果を認めていない人には費用をいくら下げても効果があることを訴えないと意味が無いことを示唆しています。

ラ・フォル~の成功事例は、クラシックのコンサートを一連のお祭りにすることで楽しそうな雰囲気を作り出したことで効果「感」を演出すると同時に、低価格を進めたことがポイントなのではないでしょうか。

そうすると他のオーケストラやコンサートホールはどうすればいいのか?価格を下げるのではなくて知覚価値を上げることがポイントになります。

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