Thursday, February 19, 2009

銃・病原菌・鉄


欧州で文明は育ったがアフリカでは育たなかった。その理由は下記の通り。

1:東西方向に伸びる大陸
2:従って種の分散が容易(南北の移動は気候が変わるが東西の移動では変わらない)
3:多くの栽培食物と家畜を養える
4:余剰食料から食料貯蔵が産まれる
5:人口が凋密化し、階層化された社会が産まれる

この結果、次の文物や現象が生み出される
:政治機構/文字(食料生産に従事しない文化人の発生)
:疫病(凋密な人口と都市の発現)
:外洋船
:鉄、そしてこれを用いた剣や銃


カロリーが増えれば人口は増える。ところが野生の動植物には食用に適さないものが多い。
理由は次のうちのどれかである。

1:樹皮などの様に人間の消化器で消化できないもの
2:オオカバマダラやテングタケのように毒があるもの
3:クラゲなどの様に栄養価が極端に低いもの
4:小さな木の実の様に調理が面倒なもの
5:昆虫の幼虫などの様に集めるのが大変なもの
6:サイなどの様に危険で捕まえられないもの

ここに一つのアイデアが出てくる。数少ない食用にすることのできる動植物を選んで育てれば、単位面積あたりの算出カロリーを高めることができるのではないか。

これが農耕と牧畜の資源である。農耕と牧畜は、ざっと計算すると狩猟採集に対して単位面積当りの養育人口を10〜100倍に出来る。

そしてこれは、また狩猟採集民よりも、農耕牧畜民の方が軍事的に有利であったことをも意味する。

農耕と牧畜はこのようにして多くの人口を養うことを可能にした。そして、農耕と牧畜は定住生活へと誘導する。そして定住化は出産サイクルを短縮し、さらに人口の凋密化に招く。なぜか?野営地から野営地へ移動しなければならない狩猟採集民の母親は、身の回りのものを運びながらの行動を強いられ、幼児を一人しかつれて歩けない。次の子供は、先に生まれた子供がみんなの足手まといにならずに歩ける様になるまでは産めない。

現実に、移住生活をしている狩猟採集民の女性は、授乳時の無月経や禁欲、間引き、中絶などによって、次の子を産むまでに約四年の間隔を空けている。それにひきかえ定住生活をしている人々は、子連れで移動する必要がないので養える限り多くの子供を産み育てることが出来る。多くの農耕社会において、出産間隔はおよそ2年で、狩猟採集民の半分程度である。

さらに、定住生活は余剰食料の貯蔵と蓄積をも可能にする。食料の貯蔵が可能になると、食料生産に携わらない人たちを養ったり、村や街で特別な仕事に従事する人たちを養ったりすることが出来る様になる。これは宗教的な存在や支配者の存在へとつながる余裕を生み出す。

食物は動物の様に移動できない。一方で、同じ場所で子孫を増やすことはリスクが大きい。天変地異が起こると種が全滅するからである。従って、食物としては、他力によって子孫を地域的に分散させるインセンティブが発生する。ある種の食物は風や水に運んでもらうように進化した。しかし多くの食物は、種子をおいしい果肉でくるみ、それが熟したことを色や匂いで知らせることで動物をあざむき、この誘惑にはまった動物を使って自分の種子を遠くに運ばせるという手段を選んだ。

食物の種子の多くは動物の体内で消化されずに排泄物に混じって出てきて、そこで発芽する。実際のところ、多くの野生植物の種子は、動物の消化器を一度通過しなければ発芽できない。

例えば野いちごは、熟す前は緑色をしていて固く、味も酸っぱい。種子が熟成してくると身の部分が赤くなり、柔らかみを増し、甘くなる。そして肝心の種子が噛み砕かれないよう、果肉は甘くなっても種子は苦い状態を維持し続ける。


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