Sunday, October 21, 2007

インターネットは民主主義の敵か

10/23 インターネットは民主主義の敵か キャス・サンスティーン

ハっとさせられることの多い本でした。

ポイントは インターネットは必ずしも民主主義の味方ではない ということで、そのココロは

:膨大な情報のオーバーフローがおきる
:全部処理できない以上、何らかのフィルタリングが必要になる
:フィルタリングによって「自分にとって新しい意見」「自分とは合わない意見」を阻害する
:意見が同じ人が集団化することで社会の多様性が失われていく
:多様性の認識・受容は討議性民主主義の根幹を成す

ということである。

実はこの主張は本書の最初の20ページと最後の20ページに実に簡潔にまとめられているので、 急いでいる人はそこだけ読めばいいかも。


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■民主制度は広範な共通体験と多様な話題や考え方への思いがけない接触を必要とする
- 各自が前もって見たいもの、見たくないものを決めるシステムは、民主主義を危うくするものに見えるだろう
- 考え方の似たもの同士がもっぱら隔離された場所で交流しているだけでは、社会分裂と相互の誤解がおこりやすくなる
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■良質の日刊紙、または夜のTVニュース番組の真の強みは未知なものへの出会いと準拠枠の提供にある
- 読者・視聴者に広範な話題や意見に出会うことを可能にすることにある
- 何百万人もの人が共有する枠組みを作る
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■共通体験は社会をつなぎとめる接着剤の役割を果たす
- 混合型社会で社会問題に手をつけようというとき、共有体験がなければどうしようもない
- 社会の成員同士が理解できないかもしれない
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■アメリカにおいては「自由の最大の敵」は「消極性」である
- 最高裁判事であったルイ・ブランダイスはこう書く
- 我々の自由を勝ち取った先達は、国家の最終目標は人間を自由にして才能を発揮させること、と信じていた。また、施政においては、話し合いによる力が恣意的なものを抑えるとも信じていた・・・・自由な言論と集会なしには議論は不毛になる・・・と信じた・・・自由の最大の敵は消極的な国民である。公開議論は政治的義務である。これはアメリカ政府の根本的な原理である
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■フィルタリングはネットだけじゃない
- つきつめてみれば、どの新聞を読むか、どの番組を見るかもフィルタリング
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■ネットは多様性を押し広げる役割も持つ
- 好奇心に基づいて新たな知の探索を可能にする
- 情報を探す人には多様性をもたらすが、情報がもたらせることだけを求める人にとっては多様性を排除する方向に働く
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■しかし一般的に情報がオーバーフローした状態では、人は自分と同じ意見を聞きたがる
- 白人の人気テレビ番組十傑とアフリカ系アメリカ人の十傑を比べると、両方のリストに顔を出す番組はほとんど無い
- アフリカ系アメリカ人のトップテンのうち7つの番組が、白人の間では「もっとも」不人気な番組のランキングで上位に入っている
- リンクの調査に関しても同様で、同じような見解・政治的な立場の意見があるHPばかりリンクが張られ、逆の立場のHPにはリンクが張られていない
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■言論の自由は、贅沢品ではなく、必需品である
- 貧困国あるいは社会や経済の問題で苦しんでいる国々においては、経済成長と国民の衣食住の充実が優先課題であって、民主主義の奨励・言論の自由は後回しにされるべきだ、という意見があるが、これは見当違いである
- 経済学者アマーティア・センの研究によると、世界史の中で民主的な報道機関と自由な選挙制度を持つ体制に飢饉が起こったことは無い
- センが実証する出発点は、飢饉は食料不足の必然的な結果ではなく、社会的な構造が生み出した産物である、ということである
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■祝日はこの「思いもかけないテーマとの出会い」のために存在する
- 祝日は本来、国民にとって重大な出来事を皆で一緒に考えることでっ国づくりの手助けにするためにある
- 加えて、祝日には多様な人々が共通の思い出・関心を持つことを促進する
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■選択肢の縮小は必ずしも抵抗をもたらすわけではない
- 社会学者のジョン・エルスターはすっぱい葡萄のたとえをもって説明する
- 選択肢が狭められると、失ったものについての選好が減少することがある

1 comment:

Meri said...

読み終わったんですね。
うん、これは面白そう。