Wednesday, August 29, 2007

読書日記:歴史家の自画像

8/28 歴史家の自画像 阿部謹也



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■昔の人は、今の人とぜんぜん違う
- 時代劇とかは舞台が昔なだけで、現代人のドラマ
- 歴史家が中世とか江戸のものをやろうとすれば、そこでは現代人とまったく違う人が出てくるドラマになる・・・面白そうでしょう
- ただ、それをやると読者とか視聴者は自分を投影できなくなるので戸惑う
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■ラテラノの公会議は歴史的な事件だ
- 告白をシステム化し、近代的自我の成立を促した
- フーコーもそう言っている
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■ものを考えるのは一瞬
- じっと考えるのではない
- 一瞬の密度が大事・・・その密度が薄れてきたらもう研究者としてはダメ
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■三大宗教とローカルの宗教、違いは経典の有無にある
- 経典があることで伝達や解釈が可能になる
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■生活に根ざした習慣から変えないとルールというのは変えられない
- 贈与とか贈答とかが人間関係の基本にある
- 汚職の追放をやる、ということになるんだったらお歳暮・お中元は一切禁止と、それくらいのことをやる覚悟がないと根絶できない
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■日本は西欧文明の受け止め方を失敗した
- 文化というのは特定の地域に生まれ、特定の人間によって担われている・・・不合理なものを含まざるを得ないものだ
- 西欧文化というものは西欧社会の中で、特定の地域において、特定の人間集団によって担われてきた不合理なものを含む、感性に訴えるものとしてわれわれは受け止めず、むしろ普遍的なもの、合理的なものとして受け入れてしまった
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■文化と文明は違う
- 文明は開かれているが文化をよそ者を拒絶する
- 高村光太郎は日本を捨ててパリに行ったけれども、そこで拒絶されてノイローゼになって帰ってきた・・・・漱石もそう
- 日本人だって外国人が源氏物語を研究していると聞くと「大変ですね」とか口では言うけど、内心では「おまえにわかるものか」と吐き捨てている
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■文化が文明になるためには他民族を飲み込まなければいけない
- 日本は他民族を支配した経験がない・・・・朝鮮とか台湾には多少支配を及ぼしたけれども、そのときには日本語とか日本文化を押し付けて、うまくいかなかった
- 本当に永続的に支配しようと思えば、支配する者は支配される者から取り込まなければならない
- 支配するものが変質することによって支配は存続する
- ローマは、異民族支配をしてきたために文化から文明になった
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■ルネサンス以降の人間は世界を急進的に理解する
- 自分の中にいったん取り込んで理解する
- 中世の人は逆で、自分を世界に投影して理解する
- その例がたとえば星座である
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■個人の解放を現代的なコンテキストだけで理解するべきではない
- 個人が解放された・・・近代の勝利だ・・・・まことにその通りなのだが、その渦中にあった人たちはずいぶんつらい思いをしている
- その苦労が実は近代人を生んでいくのだが、中にはそういう自由に耐えられない人も出てくる
- エーリッヒ・フロムは「自由からの逃走」で、自由のしんどさを描いた・・・
- このころに本意ではないのに解放されてしまった人はしんどい思いをしたのではないか

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